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涙が涸れる程泣いた後。
彼女は朦朧とした意識の中、微かに震える手で瓶の蓋を外し、白い錠剤を掌で受けた。
そのうちの何粒かが掌から溢れ、膝を伝い、ぱらぱらと固い音を立てては暗褐色の床板の上を転がっていく。
一瞬、何錠飲もう、と迷ったのは意外だった。
迷うことなんか、何もないのに。
泣き笑いの表情で、彼女は唇を歪めた。
彼のいないこの世界で、これ以上失うものなんかないのに――。
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