春×逞

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沖縄に移り住んでから、3年。 よくも悪くも順風満帆な生活は、少しつづ変化をもたらしていた。 ハル「ごめん、逞さん。これから仕事仲間と飲み会に行かないといけなくて…ホントすんません」 タクマ「え?…あ、ぅ、うん…平気だよ。いってらっしゃい。気をつけて」 ハル「ホントすいません。…行ってきます」 春さんから与えられる優しいキスを甘受して、最近多くなった飲み会に向かうその背中を、黙って見送る。 パタン、閉められた扉を暫し眺めて、ふぅと息を洩らした。 …また飲み会、か。 段々と多くなってきている飲み会に、頭が痛くなる。 ご近所付き合いは大切だからと、知り合いの誘いを無下に断らないお人好しの春さんのことだ。仕方がない。 お酒が苦手な俺が行ったところで暇なだけだと判断した春さんが考慮して、こうして一人だけ向かう姿を、俺は何度見送っただろう。 今日も今日とて、その背中を黙って見送ったが、やっぱり俺は。 タクマ「…春さん」 自然と足が向かう寝室。飛び込んだベッドが揺れ、派手に軋んだ音を発てたが、気にしない。 春さんの枕を抱き締めて、微かにする薫りに顔を埋めた。
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