No,4

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一通り叫ぶように言い聞かせると、呆けていた愛斗さんの目から又涙が 「っ、…すま、ん…」 片手で目を覆って、男らしく泣く愛斗さん 俺はまだ固く握られていたもう片方の手に上から手を添えた その手はピクリと反応すると、ゆっくりと力が抜けて行った 見ると掌には爪が食い込んだ痕があって痛々しい 「すまん……朔…」 「もう良いですよ、愛斗さん 俺もほっぺ叩いてすみませんでした」 片手で添えた手をキュッと握る 手に血が付くとか、そんな事どうでも良い 愛斗さんは涙を堪えて泣き止むと、手を退けて俺を見た 泣いて濡れた黒い瞳が何時になく綺麗に見えた 「ホンマにすまん…」 「それ以上言うならもう1回平手打ちですよ」 手を構えて言うと、愛斗さんはそれは嫌やと力なく笑った それに俺も笑う やっと何時もの愛斗さんになった 「もう、あんな事しないでくださいね」 言っといてなんだけども思い出して恥ずかしくなって来た 赤面してしまいそうになる 「ん、分かっとる」 愛斗さんはばつが悪そうな表情で言うと、目線を下げた 俺は愛斗さんの頭に手を乗せて 「怖かったですけど、もう過ぎた事ですし 俺も気にしない事にするんで、愛斗さんも気にしないでください」 ね、と微笑み掛けると愛斗さんが抱き付いて来た 今日の愛斗さんは感情の起伏が激しい様子 俺は抵抗せずに抱き締められておく 「すまん、ありがとうな朔 ホンマ大好き、愛しとる さっきの言葉嬉しかったで」 「……滅茶滅茶言っちゃっただけですよ…」 「せやっても俺は嬉しいねん」 愛斗さんは体を離すともう一度ありがとうなと言って 俺はちょっとだけ恥ずかしくなった 「朔に嫌いて決められんように頑張るわ」 愛斗さんは何時ものようにニッと笑うと、俺の頭を撫でた 「精々頑張ってくださいww」 俺は撫でられたままにそう言った .
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