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愛斗さんは俺が泣き止んだのを見計らって、体を起こして座らせてくれた
涙は止まったものの、未だスンッスンッと鼻を啜る俺
気を抜いたら泣きそう
「ホンマ…すまんな、朔」
下を見る俺に泣きそうな声で謝る愛斗さん
その声にそっちを見ると、愛斗さんは眉を下げて今まで見たことない顔をしていた
どうして…泣きそうなの
「さっきの、悔しいって何ですか」
俺には聞く権利があるはすだ
目でそう言うと、愛斗さんは躊躇いがちに口を開いた
「朔が転校生に2回も傷付けられてもうた
1回目ん時に守るって言うたのに…
守れんかった」
愛斗さんは手をギュッと握ると、下唇を噛みしめた
拳が強く握られたせいで、指の隙間から血が流れた
「自分が情けない、悔しい、腹立つ…」
「っ、そんな…」
「俺がもっと早よう駆け付けとったら良かった
せやったら朔も傷付かんかった」
ついに愛斗さんの頬に涙が一筋伝った
愛斗さんは涙を拭かず、ただ耐えていた
「そんで…、こんな自分が朔の事好きでおってもええんか思えて来て
いっそのこと嫌われてまお、思て…」
そして又すまんと言った愛斗さん
愛斗さんも愛斗さんなりに色々悩んでいたらしい
しかし
だからと言って許すか!!
__パチンッ
「っ、」
「愛斗さんの大馬鹿野郎!!」
ジンジンと愛斗さんの頬を打った掌が痺れた
赤く染まった愛斗さんの頬と俺の掌
流石に殴れはしなかった
「傲るのも好い加減にしてくださいっ!!」
叫ぶと、愛斗さんは目を白黒させた
けれど俺は気にしない
寧ろ若干アホっぽくて良い気分だ
「愛斗さんは超人じゃないんだから、そんな何でもできなくて当たり前です!!
それは俺も皆も全員そうだし、知ってる事じゃないですか!!
それを悔しく思うのは勝手ですけど、俺を理由にしないでください!!
俺は愛斗さんの事、そんな凄い人だなんて思ってません!!」
そりゃ確かに仕事も勉強も運動だってできて、更に族の総長だなんて凄い事だけど
だからって何時も人の危機に駆け付けて、その危機から救ってくれるスーパーマンみたいな人だなんて思ってない
つかそんな事よりも
「それに!!
愛斗さんを好きか嫌いかは俺が決める事です!!
勝手に好きでいて良いかどうかなんて決めないでください!!
それを決める権利は俺だけのものです!!!」
俺的にはこっちのが重要だ
俺は簡単に離れて行けるような、そんなに軽い存在だったのかと思えて
その事の方が傷付く
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