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目の前に広がる暗闇の世界。
下を向くと暗闇の中なのに何故か自分の体が見える。何故か学校の制服を着ている。自分以外は何も見えない。
「……また、か」
現実には有り得ない世界が視界に広がっている。その時点で気づいてしまう。ーー夢だ。
目を一旦閉じ、ゆっくりと開けると、視界は光に包まれた。その光が明けると、暗闇の世界から現実と思うほど、夢にしては鮮明に映る世界が広がった。
目の前には病院があり、俺はその病院の敷地内にある公園に立っていた。
『レン』
声のする方に振り向くと、そこには俺と同じ学校の制服を着た一人の男子高校生が立っていた。
そして、その男子高校生の前には同じ制服を着た“もう一人の俺”がいた。
『なんだよ』
俺の目に映る“俺”は男子高校生の呼びかけにぶっきら棒に答えた。
近くにいる二人は俺に気づかない。“俺”に俺の意思はない。
俺自身もこの状況は――経験した。“過去の自分”が言葉を発している。
現実のような夢の世界で、経験した過去の世界で、俺は二人には見えない第三者としてそこに立つ。
『ありがとうな』
そいつの唐突のお礼に“俺”は戸惑っている。
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