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「魔物退治の報酬ももらったし、今回は僕が奢りでさ」
リクの提案に、殺風景な山小屋が俄(にわ)かに色めきたった。
「ほぅ、本当に奢ってくれるんだろうな?」
窓際の椅子に腰掛けていた、俺達、五人パーティーの内の一人、僧侶(プリィスト)のクウカイが、奢り、という言葉に反応し、ニヤニヤ笑いながらリクに尋ねた。
「もちろん」
そして、その問いにリクは二つ返事で切り返した。
「食事か、それはいいな。で、場所と集合時間はどうするのだ?」
クウカイと向かい合う窓際の椅子に腰掛けていた騎士(ナイト)のユキヒメも、愛用の両手剣を磨きつつ、玲瓏(れいろう)という言葉がよく似合う顔をいくらか綻ばせて、リクの提案に賛成の意を示した。
「そうだね……。今日は時間的に厳しいし。明日の正午にグレゴルの店に集合って事で」
「賛成! 異義無し!」
「あ、こら。フウ!」
すると、先ほどまでしおらしくしていた規律違反者。
重戦士(バトルマスター)のフウは素早く立ち上がると、これ幸いと窓際のテーブルの方へ駆けていった。
このパーティーのムードメーカーである彼女が、今のメンバー達の会話に混ざろうとするのは読めていたが……。
しかし、タイミング的に今のは俺の説教を躱(かわ)すため。
明らかにわざとなので、咄嗟に引き止めようとした、その瞬間、
「それで、レオンくん。キミはどうする?」
最後にリクは、この明るい雰囲気の中で唯一渋面を作っていた魔法戦士(マギ)の、レオンこと俺に話を振った。
まぁ、この会話の流れなら自然な結果だが。
「あ……あぁ、行くさ。もちろん」
俺は、フウに対して今一つ腑に落ちないものを胸に抱えてはいたものの……。
それでも、リクからのその誘いを断る理由は特に無かったため、当然首を縦に振ったのだった。
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