―四―

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「覗き見なんて悪趣味だね」 「覗き見などしてない。偶然見てしまっただけだ」 「ふーん……そう。じゃあ、そう言うことしておいてあげるよ」 ふふん……と鼻で笑って栄太郎さんは歩きだす。 「あ、待ってください!!一緒に帰りますから!!さ、杉蔵さんも行きましょうよ」 栄太郎さんに置いていかれまいと、杉蔵さんの手をひき私も後をついていく。 「……慌てなくてもちゃんとついていくから、手を引っ張るな」 杉蔵さんはスッと握った手を離す。 「でも、はぐれちゃったら……」 「自分が住む地だ。迷う筈もないだろう……それにはぐれたとしても、栄太郎もいるのだし、あんたが無事に家に辿り着くのなら問題はない」 「それはそうですけど……でも「まるで恋仲みたいなやり取りだね。俺はいつまで見せ付けられてたらいいの?」 腕組みをして仁王立ちの栄太郎さんは、笑顔だというのに何故かどす黒いオーラを纏っているように見える。 これは……怒っているのだろうか? 「恋仲って……。どこをどう見たらそんな風に見えるんですか?っていうか、何で怒ってるんですか?」 「別に怒ってなんかないけど?」 「その雰囲気は怒ってますって。……あっ!!わかった!!さては栄太郎さん……嫉妬してるんですね!?」 「……は?な、何言ってんの。馬鹿なこと言わないでくれる?俺が嫉妬なんか……」 「してるじゃないですか。私に杉蔵さんを取られたなんて思ってるんでしょ!?もー、栄太郎さんったら本当に素直じゃないんだから……」 表情はいつもと変わらず飄々としてるけど、少し目が泳いでいたのを私は見逃さなかった。 そりゃそうだよね。 自分の方が付き合いが長いのに、ぽっと出の奴に自分より親しくしてたらヤキモチだって妬いちゃうよ。 うんうん……と一人で納得して頷く。 「……馬鹿もここまでいくと尊敬に値するよ」 「……これは手強い相手だな、栄太郎」
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