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梅雨明け間近の空は、心なしか雨雲の色がさらに濃くなって、その降り注ぐ激しい雨音は、人の心にまで暗い影を落としそうだ。 憂鬱さが湿気と共に身体にまとわり付き、昼間だと言うのに車のヘッドライトを灯さなければ事故でも起こしそうな空の暗さも手伝って、余計に気分が滅入る。 激しく動くワイパーを見ながら、高木巡査長はパトカーの助手席で小さく欠伸した。 天から落ちてくる無数の小さな水滴が、フロントガラスに突き刺さるような激しい音を立てて、ボンネットや屋根には不安を掻き立てるような音を叩き付ける。 豊満な肉体をもて余した高木の助手席は、パトカーの動きに合わせてギシギシと音を立てていた。
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