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ポカポカの陽射しの下、気持ち良い汗を拭いながら家に入った祐太郎が手を綺麗に洗ってから松浦によく冷えたスポーツドリンクを出してやりつつ、一心不乱にパソコンに向かっているシナンに声を掛ける。
「おやおや。シナンくん。
何やら、ずいぶんと熱心ですね?」
「……………………」
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャッ!!!
「……………シナンくん?」
「………………………ここ…わからにゃい…」
とか呟いてから、一度手を止めて、何やら手元の辞書をひき始める。
「シナンくーん…?」
「ぁ…。しょっかぁ…。これが…女性名詞だからにゃぁ~…」
ウンウン…(-_-)…ウンウン。
「シーナーンーくぅーんー?」
「んもぅ…。
ボクの…バカァ~…!」
そして、再び…。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャッ!!!
どうしても祐太郎の声が耳に入らないシナンが、何をそんなに無我夢中でやっているのかと手元と画面を覗いてみた。
「!!!!!!!」
シナンの手元には、英仏辞典。
あと、NHKのフランス語講座のテキスト。
あと、父の英語版の子供用のアラビアンナイトの本。
「これって…」
シナンの隣に立ち尽くす祐太郎にさすがに気付いたシナン。
「あぁ。どうかしたぁ~?」
祐太郎を見上げて、無邪気に言ってくるシナン。
「シ…シナンくん…?君…、フランス語を勉強してるの…?」
シナンは、明らかに英語で書かれているアラビアンナイトをフランス語訳している…。
「うん。アフリカにゃにょ~!」
………………???
「アフリカ…?」
「んちょ…。
アフリカは…フランス語でぇ…。
中南米はぁ…スペイン語ぉ~!」
「──はい…???」
ププププププププ…。
それからしばらく、祐太郎は自らの忍耐力の極限を試されつつ、なかなか上手に説明できないシナンの言葉を根気強く聞いてみた。
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