再会の章第一話:鳥の籠

2/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
外は日本の代名詞とも言える四季により 灼熱地獄だと言うのに、ここにいる皆は 私も含めきっちりとスーツを着ている。 部屋に設置されてる暖冷房で多少は 涼しいかもしれないが、窓際の席は 背に容赦無いほどの日光が照りつける。 「おはようございます佳奈様。 こちら、本日のスケジュールを社長より お預かりしております」 ほぼ毎日と言って良いほど社長から私の 一日を記した紙を持って来る男性は 元社長の秘書を勤め、社長である父に 膨大な信頼を寄せらた私の見張り役、 岬翔さん。 一回り年下の私でも様付けしもう一人、 元室長の世話役の周防宏紀さんと共に、 ワンフロアにいるその他25名の社員と 共に切磋琢磨をしながら1日の大半を 過ごす。 「ありがとう」 受け取り、時間欄を見ると約10分刻み 本当に何を考えているのか分からない 仕事の積めように溜め息が溢れそうに なるが、必死に押さえ込み、作り上げた 笑顔を向けた。 「私の帰る時間を気にせず、 皆さんは定時で上がってください。 今日も1日よろしくお願いします」 「いえ、私か周防は必ず貴女の手伝いを するようにと仰せつかっております」 「え?いや、だって徹夜だよ!?」 「私は特に社長に支え、貴女様よりも 忙しい毎日を過ごして参りました。 お気になさる事はありません」 「それでも!!」 ピロロロロ 彼の言う通りにしろと言わんばかりに デスク上の電話が鳴り、無視もできる 筈もなく受話器を握った。 「はい、もしもし?」 電話に出ると岬さんは一礼して席に 戻って仕事を始めてしまう。 話そびれたのは何度目かは分からない。 それでも彼に伝えなくてはならない。 もう逃げないから少しの自由を許して 欲しいと……。 「こちら、受付の佐久田と申します」 「お疲れ様です」 「お疲れ様です。今宜しいですか?」 「はい。大丈夫です」 「ありがとうございます。 室長に会いたいと言う方がロビーに お見えになっております」 「誰」 「高木康介様にございます。 本日はお約束されていないので時間が なければ改めると仰っていますが、 いかがなさいますか?」 ま、また……か……。 正直、会いたくないと思っていても 口に出せるはずもなく、溜め息をつき すぐ行くとだけ伝えて席を立った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!