誰がために

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※ 「今日晴れてよかったね!」 リアが嬉々とした足取りで要を先導する。 「全く、まさか本当に来ることになろうとはな」 要たちは平日を狙い遊園地に訪れていた。人は少ないだろうと思っていたのだが、世間でも人気なのか、平日にしては客が多い。 「要、あれ、あれ乗ろう!」 リアが指差したのは、馬の乗り物がぐるりと回るあれのこと。 「メリーゴーランド……勘弁、見ててやるから一人でいけ」 「むう、一人じゃやだよ! 一緒に来てよ!」 「そんな恥ずかしいことできるか。俺を何歳だと思ってんだ」 ――まあ、こいつは百と何歳だが……。思ったより精神的な成長は遅いのか。十年たった今でもそんなに変化はないな。 「いいから行くの!」 「お、おい……くそ、今回だけだ」 「わかってるって!」 グイグイと手を引っ張られつつ、リアにはバレないように要は笑った。
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