物語の始まり

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今、俺達はあっちの世界に行くための準備を道場の裏で燵姫がしている。それをリビングで待っている状態だ。 「お兄ちゃんと燐ちゃんがほぼ毎日喧嘩して紗夜さんを振り回したから疲れてるんだよ」 「そういうことか」 俺は三日目の朝、起きたら俺と台南の間に楓が寝ていたことで疲れたなぁ……。その日は台南が先に起きて、なんで楓が寝ているのかでもめて。それでも楓は寝ていたけど。それが毎日だもんな……ほんと疲れた。 「紗夜、ごめん」 「いいよ、別に謝らなくて!」 「燐火!正羅!準備出来たぞ」 「もう出来たのか。さすが桐野さんだな」 「バイバイ!燐火さん、正羅さん!」 「ちょっと言うのが早いよ多美…」 道場の裏に行くとちょうど人が二人通れるくらいの木造の古い門が有った。 こっちの世界に来たときのように、門の向こう側の景色はグニャグニャして気持ち悪い。 「またここに入るのか……」 なんか見てると憂鬱になるな。 「燐火、さすがに今日は怖くないだろ?」 「燐ちゃんいつもお母さんに押してもらってたもんね!」 押してもらってたって、燵姫が無理やり押し込んでいる姿しか想像出来ない。 「台南、お前もしかしてこっち来るとき怖かったのか?」 「そんなわけないじゃない」 本当に言動と表情をごまかすのは上手いんだよなこいつ。ただ、残念だったな俺には感情がわかるんだ。
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