19将 最期の采配

7/8
656人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
 重治は、ほとんど起き上がることが出来ない。  忙しい中秀吉は、日に何度か顔を出し、戦況の報告と重治の様子を見に来る。 『秀吉様、三木城は、我が居なくとも間もなく落ちるでしょう。  その時には、速やかに三木城に食糧を運び込み一人でも多くの敵を助けるのです。  民を思い良政を行って下さい。  それは、きっと貴方にとっても徳となり必ず良い結果に結び付きます』  秀吉は、涙声で「わかりました。肝に命じます。半兵衛殿の言うことに間違いは無い。  しかし、半兵衛殿が居なくなったらわしは、誰を頼りにすればよいのだ?」  重治は、頭の中に黒田官兵衛の姿が浮かんだが、それは官兵衛自身が決めることだ...。  思い直して『神子田半左衛門が適任と考えます』  秀吉は、一瞬間を置き「わかりました半兵衛殿」と手をとった。  秀吉は、何故重治が、神子田を選んだのか、意図を読めることは、無かった。  その後しばらくして『無欲無敵』の『天才軍師』竹中半兵衛重治は、平井山陣中で静かに息を引き取った。  天正7年、享年36歳波瀾万丈の人生であった。  戦乱の世に生まれ、幼い頃から兵法を極めて19歳で竹中の家督を継ぎ菩提山城主となる。  21歳で難攻不落の稲葉山城をわずかな手勢で落とし天下に名を知らしめた。  信長の誘いを断り、主に城を返し、 全ての責任を一人でとり隠居する。  その後、秀吉の『七顧の礼』に心を動かされ軍師となる。  天性の才能で秀吉軍を勝利に導き、秀吉を押し上げる。 『己の知略は天下万民の為に用いるべきである』 との信念のもと。  100年続いている戦乱の世を終わらせて、人々が笑って暮らせる平和を築く為に采配を振る。  己の信義を貫き通し無限の知略は、無敵の戦略を生み出した。  無欲であり常に沈着冷静であった。  その生き方は、山々を駆け抜ける風のように爽やかに見えた。  重治は、『戦国最強』の『天才軍師』と呼ばれることとなる。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!