宵闇

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幽霊だとか,妖怪だとか,目に見えないものは信じないようにしてるのだけど,一度だけその類いを見た事がある。 俺は一度死にかけた事がある。幼い頃の夏の日だ。 両親と川遊びに来ていた俺は溺れてしまった。 その時に一度だけ,この世のモノではないモノを見た記憶がある。 『あ…俺,死んだ…。』 朦朧としながら目を開けたら,誰かが俺の顔を覗き込んでた。 「迎えに,来たの?」 俺の目に映った影は首を横にふったように見えて,何か伝えようと口を開いた。 その唇は何かを象るだけで,音としては俺の耳には聞こえてこなかった。
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