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ガンガンに流れるクラブミュージック。 フロアは深夜の12時を過ぎて人で埋まり始めた。 「ハルミ、久しぶり。元気だった?」 ポンと肩を叩かれて、後ろを振り返る。 「あー、まぁまぁ。仕事忙しくてさ。 コウ君こそ元気だった?」 大音量の音で、必然的に声が大きくなる。 「元気、元気。酒奢るから飲もうよ」 声が聞こえるように耳元に唇を寄せて来るのを ボーッとしながら見つめる。 高野浩二(たかのこうじ)だからコウ君。 私の昔の彼氏、だった人。 私の目の前に、新しい彼女を連れてきた男。 本当にこんな男っているんだなって思いながら、ビンタをしたことは今となっては笑える思い出だ。 新しい彼女には、この時何もしなかったのは懸命な判断だったかな。 今では顔も覚えていないが、 この男の彼女で、良い気味だと思ってたりする。 なぜならコウ君と、いまだに身体の関係があるからだ。 半年に一回ぐらいだけど。 男にしたら都合の良い女に思えるかもだけど、 女からしても都合の良い男ってことに男って気付いてるのだろうか。 手っとり早く優越感に浸れるし、この男の彼女じゃなくて、 良かったって思える。 ただの自己満足と、情と知ってる人だから気をつかわなくていい。 そこに好きって言う気持ちは、私にはない。 女だって男と同じ。ヤリたくなる時はヤリたくなるし。 顔が自分好みならまぁいいかなぁと思うものだ。 特にお酒が入ったときは。 お酒を奢ってもらい、コクンとショットを飲み干す。 「やっぱり、ハルミは飲みっぷりがいいね」 お酒は強くないが好きなので、つい奢られると飲んでしまう。 「まぁねー」 すでに何杯か飲んでいるので、少しずつ呂律が回らなくなっていく。 「ね、あっち行こうよ」 腰に手を回されぐいっと引っ張られる。 頷いてコウ君に身体を預けて、歩こうとしたとき。 「おーコウに、ハルミじゃん、こっちで飲もうよ」 「本当だ、ハルミさん、お久しぶりです。」 そこには男女含め六人のグループがテーブルを囲んでいた。 「あー久しぶりです。」 私も知ってる人だが元々はコウ君の友達で 紹介してもらった人達ばかりだ。
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