1.石田佳子の不思議

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雨が降るその夜。 私、石田佳子(イシダケイコ)は深くため息を吐き、自分の部屋でごろんと床に倒れた。 床の冷たいんだか温いんだか分からない温度を背中で感じながら、もう一度大きくため息。 あちこちを見回してもここは私の部屋。何度見ようが、私が模様替えでもしない限り何も変わらない場所。 またため息。 「……ヒッマだなぁ。」 そう。私、石田佳子は──ただ暇だから、それだけで何度もため息を繰り返していた。 先週の金曜日から私の通う学校は夏休みに入ったわけだが、私にとって、夏休み程面倒な行事が嫌いだ。 まあ、普段の学生さんなら喜ぶべき長期休暇なのだろうが、残念ながら私は普通じゃない。 私は学校で勉強しながら友達と話すのが好きな人で、というか正直学校が大好きなのだ。 何故なら、自分の頭に基礎的知識を突っ込む事が出来て、相応の自身発展が出来る環境が整っていて、尚且つ赤の他人と呼べる人物と一から十までの展開をその目で、この体で学ぶ事が出来るから。 自身の能力を高める事が出来、さらに自分を理解してくれる友人さえ出来るなんて、嬉しくて堪らない。 そうすると夏休みというのは本当に面倒だ。どうしてこう、勉強をさせて友達まで作って、そこで約一ヵ月半も休みを与えるのだろうか。間違いなく夏休みの間に堕落しきって、二学期で色々リセットしてしまうだろう。主に頭が。 しかしこれは昔からある学校という規律を固めたような存在が与えたルール。それに従わない私を愚か者と笑われてしまうのは嫌だ。 ……とまぁ、そこまで大袈裟に言っといてなんだが、結局は暇なのだ。そしてその暇を、学校の所為と小学生が言いそうな悪口で潰しているのだ。 暇だ。暇過ぎる。 「……あー。」 そういえば、冷蔵庫の中にケーキがあったような。確か母さんが「おやつにケーキは必須よね」とか言って買い溜めしてなかったか。日本という無駄に技術だけ発展させた国でも作れなさそうな形をしたケーキもあったような。 母さんは一体どこで買ってるんだ……。 「……食べちゃおっか。」 一人独占していた自分の部屋でボソリと呟き、ゆったり立ち上がって部屋を出る。 なに、母さんは別に食べちゃいけないだなんて言ってないし、ちょっとは食べても許してくれるだろう。 ただし、食べても良い──とも言ってないけど。
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