1.石田佳子の不思議

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ケーキが入っている冷蔵庫の前に辿り着く。 「しかし、こんなダルかったか……」 二階の自分の部屋から一階のキッチンに着く迄に時間が掛かったのは、夏限定の暑さの所為で私の体に怠慢が訪れてしまったからなんだろうか。 「いやしかしどんなケーキだっけー……」とかケーキの形を浮かべたりボソボソ呟いたりしながら、冷蔵庫をパカっと開ける。 ケーキが無かった。 「……マジかよ。」 ちょっと楽しみだったのにケーキ無いとかー! と叫び、その場にごろんと転がった。こんなのを誰かに見られたら何事かと思われるだろう。 ヴァー、とさっきから呟く事しかしていないが、まあする事も無いから別に良いだろう。課題も全部終わっているし。 しかし、本当に夏休みというのは暇だ。いや、夏休みに計画を立てる奴らは別に良い。それに誘われた奴らをうらめしやと祟る理由も無い。 ……もう一つ、私には理由があった。こんなにも夏休みにああだこうだ言う理由が。 「……予定ねぇよーー!」 誰にも声を掛けられれなかったのだ、私は。 それは夏休みに入るちょっと前。 周りが既に夏休みムードに浸りきっているのを、特にそれに浸りすぎてる隣の席の男子を横目で眺めながら、今日使った教科書やノートをバッグに突っ込む。 夏休みが近いのがきっかけなのか、あちこちで計画を練るグループが出来ていた。 ……別に、うずうずとかしていない。私は遊びより勉強を選ぶ程真面目な奴なんだ。夏休みと言えば頭を鈍らせない為に休息時間を増やしただけのただの…… 「ねえねえ、石田さん誘ってみる?」 ぴくっ。 「石田さんって、クラス委員長の石田さん?」 「なんで同じクラスの、しかも委員長を覚えてないのよー」 「冗談だよー。」 ……お、覚えてはくれてるんだな? 「で、どうする?誘ってみる?」 「……んー、どうしよっか。」 な、なんで迷うんだよ。私は暇だぞ。誘っても良いんだぞ。 「委員長美人さんだし、カッコいいけどさー。」 お、お?まさかそんな評価されてるとは。身だしなみには気にした事は無かったんだが。 「でもなんかさ、怖いんだよねー。キリってしててさ。クールな感じが。」 え。 「あー、確かに! というかあんま笑わないからねあの人……」 え、うそ。 「んー、どうする?」 ……。
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