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「ゲームブック?」
ある晴れた日の物理部。今日も今日とて集いし部員(総勢3名)は、本日の活動内容を決定する話し合いを行っていた。そんな折だった、部員の1人佐々木まぐろくんから、『ゲームブックをプレイしないか』と提案があったのは。
「ゲームブックって……小さいころに何回か遊んだ、選択肢を選んでいくアレ?」
「そう、アレさ☆」
「そっか、アレかぁ……」
懐かしいな。確か幼稚園の時ぐらいだったか。まぐろくんが一時期のめり込んで、かくいう私も『氷山の魔法使い』やら『ドルサーガの塔』など往年の名作を次々に攻略していったものだ。
ただ、それは本当に一時期のことで、まぐろくんの興味がほかのものに移ってからはサッパリやらなくなっていた。
「待ってくれ、まぐろくんよ。ゲームブックとは一体、どんなものなんだね」
「あれ、センパイ知らなかったんですか☆ゲームブックというのは……」
待ったをかけたのは我らが部の先輩、りすくま先輩だ。そもそもゲームブックを知らないという先輩のために、まぐろくんが説明を始めた。
「ゲームブックは普通の本と違って、前から順に読み進めるものではないんです。途中で出てくる選択肢を選び、その結果指定されたページに飛ぶことを繰り返してゴールを目指すんですよ☆」
「ふむ?」
「まぁ、実際にやってみる方が早いですよ☆」
まぐろくんはカバンから一冊の本を取りだした。金髪の幼い女の子とタキシード姿のうさぎが一匹描かれた、一見すると童話のような表紙の本だ。
「これがゲームブックかね。タイトルは『不思議の国のアリス』か」
「はい、この本は『不思議の国のアリス』の世界を、読者自身が冒険するというコンセプトなんです☆この本なら『ゲームオーバーが全くない』ので、初見の人も安心してプレイできますよ☆」
「ほう、それはありがたい。しかし、最初はまぐろくんがお手本を見せてくれたまえ」
「え、ボクですか☆ボクはもう何十回とプレイしてるんで☆」
「そうか、ならばりんごくんはどうだね」
「私ですか?いいですけど」
そんなこんなでトップバッターに決定した私は、本を受け取って自分の目の前に置いた。観戦のため、まぐろくん、りす先輩が両隣に席を移ってくる。
「って、2人とも顔近いよ……」
「だ~って、こうしないと見えないし☆」
「すまんな、りんごくん」
「まあいいか……じゃ、始めますよ」
久方ぶりの興奮と少しばかりの緊張を胸に、私は本をそっと開いた。すると、中からまばゆい光があふれだし……!?5ページへ
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