僕と俺

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理事長は、プレスの前で流暢な英語で言った。 『お待たせして申し訳ありませんね。彼が、貴方達のお探しの人物だと思われますよ?』 理事長の言葉に、プレス達は一斉に色めき立つ。 『で、では、彼があの理論の回答を打ち込んだと!』 理事長は頷いた。 その横で、先生は頭を下げたまま小さくなって震えている。 『あの問題の回答をどうやって見つけたんですか! 話して下さい!』 次々にフラッシュがたかれ、光が明滅する。 先生は、言葉がわからずにオロオロしている。 理事長は溜息をついて言った。 「先生。貴方が打った問題の回答をどう導き出したか、聞きたがってますよ。説明してください。 私が通訳しますから」 理事長の言葉に、真っ青になる先生。 どうせ・・・・・・答えだけを覚えてて、その数式を打ち込んだんだろ? 全く・・・・・・・面倒な事を。 「え・・・・・・えと・・・・・あの・・その・・・・・・・」 言葉を失って、汗だくになり目を虚ろに落ち着き無く周囲を見回す先生の様子に、プレスも理事長も疑わしげな表情になる。 「君は本当に自分で解いて送ったのかね?」 理事長の言葉に、顔を歪める先生。 俺は溜息をついて、その部屋を急いで出ると近くの会議室から移動用の大き目のホワイトボードを持って応接室に戻った。
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