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「おーい」
暗闇の中、一つの声が響いて消える。
何度呼びかけただろうか?
しかし、その声に反応は無い。
「どうですか?」
違う声が最初の声に主に問い掛ける。
「駄目だね。聞こえて無いみたい」
「そうですか」
二人は暗闇の中、上を見上げる。
果たして上という表現が正しいかは解らないが、二人が望む方向としては正しい。
「いつか届くかな? ずっと呼びかけてるんだけど……」
「彼が、ちゃんと耳を傾ければ……私達が出来るのは呼びかけ続けることだけです」
「けど、アイツは意味を解ってないよ?」
「それは、困った点の一つではあるのですが……きっと、解ってくれるでしょう。私達の声も、彼の力の意味も……」
そう言うと闇の中、静けさが広がる。
そして、
「呼びかけ続けるのみだね。けど、大丈夫かな? アイツ、馬鹿だから」
「それは……ノーコメントです」
再び沈黙、しかし、それを感じると二人は少し笑った。
そして、
「おーい」
「おーい」
二人は闇の中、声を揃えた。
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