女は気難しい

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 そう言ってから俺の隣で宝石をじっと眺めている女の方に視線を向ける。  此奴は先程からカウンターの上に並べたアクセサリーに視線を向けたままだ。  そんなに欲しいのか?  …まぁ店探しを手伝ってもらったからな、餌付けの意味を込めてこいつにもアクセサリーを上げてもいいだろう。 「依頼料はその内のどれかの宝石でいいか?」 「あぁ、全然構わないよ。寧ろお釣りが出るくらいだよ」 「釣りはいらない。その変わりにいい物を何個か作ってくれればいい」 「何個か、ねぇ…中々難しい事を言ってくれる。加工はすぐ終わるからおふたりさんはそこらへんで時間を潰しておいで」  宝石の加工なのだから時間は掛かるものだと思っていたが、案外そうでもないんだな。 「分かった。また後で来る」  そういい残し、店の出口の方に向かう。  すると宝石の方をずっと見ていた女は慌てて俺の後についてくる。 「ま、待て!」
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