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チュンチュン、と雀の鳴く声がする。もう、朝みたいだ。
「うぅーん……」
ベッドから体を起こし、伸びをした。今日も気持ちの良い朝だなあ。
「うぅー……。もう朝ぁ……」
僕の双子の妹の花梨(かりん)が、毛布の中から這い出てくる。また潜り込んでたのか。
「花梨、何時も言ってるだろう? 暗いのが怖いからって、お兄ちゃんの布団に潜り込んではいけません」
メッ、と叱ってみる。けど、可愛い妹に頼られるのは悪い気分では無かったから、軽めに。僕もまだまだ甘い。
「むぅ……! それだけじゃないのに……」
花梨は頬を膨らませ、拗ねたようにそっぽを向いた。
それだけじゃない? ……ははぁん、もしかして……人恋しいのかな?
僕達の家は、父親を早くに亡くしている。だから、花梨は僕を父親と重ねているのだろう。甘えたい盛りの年齢だ。でも――。
「もう卒業しないとね。僕達は今日から、高校生だよ」
クローゼットの前に掛けてある新品の制服を見つつ、そう答えた。
紺色のブレザーとスラックスはピカピカと輝いていて、僕の門出を祝ってくれる。中学時代は学ランだったから、ネクタイを締めるのが今から楽しみだ。
「また、変な解釈したね……。なんで伝わらないかなぁ……」
どうして溜め息を吐くんだろう?
「ま、いいや。長期戦は覚悟の上だし。よい、しょっと……」
その掛け声と共に、花梨はピンク色のパジャマの上を脱ぎ、最近Cになったからと言って買い換えた白いブラを――ってうわわ!
「どっ、どうしてここで着替えるのさ!」
花梨に背を向け、叱咤した。花梨は普段からちょっと抜けていて、バスタオル姿でリビングを彷徨いたりする。兄としては、悪い男に騙されないか気が気ではない。
「あっれぇ? 朴念仁のお兄ちゃんでも、気になるのぉ?」
兄の心配も余所に、花梨のからかうような口調。
「当たり前だよ。可愛い妹だから」
背を向けたまま、そう答えた。事実、花梨は可愛い。
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