3.飛行機雲の彼方

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ビア1は、日本の航空自衛隊が保有する早期警戒管制機(略称AWACS)のE-767のコールサインだ。戦闘機とかと違ってミサイルをぶちかますわけではないが、一応軍用機の一種で、巨大なレーダーを駆使して空中を飛び回る機体を探知、さらに戦闘の際には味方の戦闘機に指示を出す偉い航空機なのだ。 訓練空域がどこにあるのかは知らないが、おそらく太平洋上で訓練か何かをした後、浜松基地に真っ直ぐ戻るのだろう。 こっちは高度17000フィートを24000フィートへ上昇中で、ビア1は34000フィートを降下中。25000フィート辺りで交差すると見た東京コントロールが、こっちの高度を抑えてきた。なぜ旅客機よりも軍隊の飛行機が優先なのかは分からないが、お偉いさんの飛行機だから…と僕は勝手に納得している。 降下しているE-767がやがて左前方に見えてくる。 「…あれだ。ビア1。あー、ビール飲みたいなー。」 「確かにスペルは一緒ですけどね…トウキョウ コントロール、ジャパンスカイ 275、トラフィック インサイト。(東京コントロール、ジャパンスカイエアウェイズ275便です。他機を視認しました。)」 E-767はやがて降下をやめて高度を維持し始めた。再び僕らの視界から消え、おそらく僕らの航空機の上を跨いだのだろう。 「ジャパンスカイ 275、リストレクション キャンセルド、クライム アンド メインティン フライトレベル 360、リジューム オウン ナビゲーション ダイレクト サカック。(ジャパンスカイエアウェイズ275便、高度制限を解除します。巡航高度36000フィートまで上昇して維持、予定ルートでSAKAKポイントに直行してください。)」 「ジャパンスカイ 275、ラジャ。(ジャパンスカイエアウェイズ275便、了解しました。)」 「ジャパンスカイ 275、リードバック マイ インストラクション。(ジャパンスカイエアウェイズ275便、こちらの指示を復唱してください。)」 「は?…ジャパンスカイ 275、リストレクション キャンセルド、クライム アンド メインティン フライトレベル 360、リジューム オウン ナビゲーション ダイレクト サカック。(高度制限を解除、36000フィートまで上昇、SAKAKポイントに向かいます。)」
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