番外編 ~sweet*honeymoon~  

38/49
12020人が本棚に入れています
本棚に追加
/741ページ
. 健の言葉に、私は彼の胸の中で小さく頷いた。 ごめんね……。もう、どこにも行かないから。 口に出しては言えなかったけれど、その大きな背中を包み込むように、強く抱きしめ返した。 そっか……。 私、健の愛情を直に感じているときは、こんなにも素直になれるんだ。 大好きな温もり。 包まれていると、自然と気持ちが落ち着いてくる。 さっきまで激しかった心臓の音も、今は健のと重なり合って、とても心地いいリズムを奏でている。 私の頬を優しく撫でながら、目の前にあるのは苦笑している彼の姿。 「姫希が、何をそんなに不安になっているのか分からないけどさ……もしそれが、俺の気持ちに関することだったら、要らん心配だから無用だ。」 要らない心配……。 私を掻き回していた不安は、そんな些細なひとことで簡単に消されてしまう。 最初から素直になって、健に本音を打ち明けていれば良かったと反省してしまう。 「……私ね、凄く幸せなの。」 「うん。」 「だから……それが、私の我儘で壊れてしまうのが怖かった……」 .
/741ページ

最初のコメントを投稿しよう!