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大晦日からお正月にかけて、仕事から帰宅した蝶子とあたしとお父さんとでおせちを囲んでちょっとした宴会を始めた。
北海道では大晦日からおせちを広げてしまうのだ。
お父さんは昨日買ってきたちょっと高価な焼酎、蝶子はシャンパンのハーフボトル、あたしは炭酸水で乾杯。
「お姉ちゃんとお父さんとで作ったの?」
お重代わりの大皿に並んだおせちを眺めて蝶子が言う。
年末に北海道に帰省すると、お父さんがおせちを作ってあたしたちを迎えてくれた。
お父さんを手伝うのは久しぶりな気がする。
忘年会だデートだと帰省しない年も多くて、親不孝してたんだと今更気付く。
「簡単に作っただけだけどな。なますと田作りは鳥子が作ったんだそ」
嬉しそうにお父さんがなますと田作りをお箸で小皿にのせていく。
「蝶子も作れるようになっておいた方がいいぞ」
「あたしは作るより食べる方がいい」
ジャージ姿でくつろぎながらおせちをつまみにシャンパンを飲む蝶子にあたしとお父さんは苦笑いした。
家族で過ごす大晦日。
夜の12時をすぎて、「あけましておめでとう」と3人でお正月の挨拶をする。
結局夜中まで起きていたので、元日の朝はゆっくりめに起きてからお雑煮を食べた。
お昼前になって3人そろって初詣に出掛ける道の途中、メールの着信音がして画面を見ると、新からだった。
『婚姻届、提出しました。』
ただ一言、それだけのメール。
あたしはこみ上げる嬉しさを隠すようにお父さんと蝶子から数歩遅れるようにして歩いた。
1月1日、元旦。
本日、加藤鳥子から三嶋鳥子になりました。
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