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9月末の祝日の土曜日。 秋晴れの空に今日は友引きで、結婚式には最適の日だ。 ひな壇には緊張に背筋を伸ばす新郎と、綺麗に着飾った新婦が並んで座っている。 「えー、本日はお日柄もよく、御両家の皆様方にもー……」 ひな壇の横で部長がなんか喋ってるけど、あたしは部長のスピーチなんか聞いちゃいなかった。 聞いちゃいなかったけど、あたしは離れたテーブル席で身体ごと部長の方向を向いて背筋を伸ばし、にっこり笑顔で部長を見ていた。 「えー、舞(まい)さんは受付の席でわが社の顔としていつも笑顔で……」 緊張している部長はすがるようにあたしを見る。 笑顔で何度も頷いてやれば、部長は安心したようにいい笑顔になって頷いた。 「慎吾(しんご)君、舞さん、末永くお幸せに!」 部長の締めくくりの言葉に一番に拍手を送る。 それはもう、我ながらグッドタイミング。 あたしの拍手にならって、他のテーブルからも拍手の音が鳴り響いた。
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