ある満月の夜

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「チッ…… 風紀か。じゃあな、海斗。次会う時は、ちゃんと空哉って呼べよ」 「近衛っ!! 待て!」 「ぁ.....」 置いてかれた……。 呼べる、かな? あの人の名前。 「…空哉、さん……」 呼びたい。呼べるようになりたい。 俺の名前を呼んでくれた。……これからも、呼んでもらえるかな。呼んでほしい。 初めて、見てくれた。視界に入れてくれた。名前を呼んでくれた。 空を見上げれば、綺麗な満月が在って。 ああ、あの人を思い出すような、綺麗な金色。 いつもより、格段綺麗に見える。きっと、あの人に逢えたからだ。 間近で見た、綺麗な金髪に綺麗な顔立ち。 触れたいと、想った。 ………頑張ってみようかな。 「空哉さん…、……空哉、さん」 次、逢えたとき。 呼ぶから。あなたの名前を、呼ぶよ。だからあなたも、俺の名前をまた呼んで。 あなたの声音で、俺の名前を呼んで。            †END†
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