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結局ミウを見付けることが出来ないまま出番を迎えた。
出来は良いとは言えなかったが、それなりに盛り上がっていたし、賢治のダメだしも無かったし、まあ…こんなものだろうと自分を納得させる。
自分の出番が終わり、またミウを探してみたが…出会えなかった。
諦めて打ち上げに参加することにした。
ビール片手にタバコをくわえていると、猫が後ろから声をかけてきた。
「シンちゃん、お疲れ!!」
「おう!」
「シンちゃん…何かあった?調子よくなかったやん。」
「べ…別に…。」
俺は、見透かされたようで、恥ずかしくなり、口ごもる。
「わかった…待ち人来ず…だろ?しかも女だな。」
猫は人差し指で軽く俺を指した。
「な…なんで、わかった。」
「ギターがそう言って泣いとったもん。」
「そんなこと…わかるのか!?」
「何年シンちゃんのファンやっとると思うの??中学生の時にシンちゃんのギター聴いて衝撃受けてギター始めたんやに。」
ああ…最初のバンドからのファンだったな…猫っつか、そん時はプッシーCatを名乗って無かったからアヤだったな。
こいつ…アヤは恐らく俺の一番のファンなのかも知れない。
「ああ、懐かしいな、アハハ。おまえ、ガキンチョだったな。ライブ行くからって張り切って無理して化粧しましたよってのが見え見えで…可笑しかったもんな。くくっ…。」
「確かにありゃ酷かったな…アハッ。ホントに懐かしい。今までずっとシンちゃん見てきたけど今のバンド最高やな。ってボーカル決まる前のシンちゃんのギタボも良かったけどねぇ…ギャハハ!!」
「それ言うな…ギター弾きながら歌うの苦手なんだよ。思い出したくねえ。」
長年続いた最初のバンドを解散して、すぐにでも何かをやりたかったが、なかなか良いメンバーに出会えず、残飯とか残り物とかいう意味のThe leftoverを名乗って一人で活動していた。
色んなバンドとやったり、寄せ集めの一夜限りのバンドを結成してやったり、楽しかったし、勉強にもなった。
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