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昇った日がいつか沈むように
生まれ落ちた命がいつか土に帰るように
確かにそのとき、一つの時代が終わりを告げようとしていた。
百数十年に及ぶ戦乱の世。各地に散らばっていた小規模の力は、互いに吸収と合併とを幾重も繰り返し、やがて日の本を二つに分断するに至る。
東と西。
戦国史上最大の東西最終決戦は、燃ゆる炎と共に終焉を迎えた。
「はは、よーく燃えてやがるねぇ」
慶長二十年。
西の拠点にして、不落城塞と謳われた大阪城が炎に包まれていく様子を、少し離れた茂みから見る二つの影があった。
一つは青年
もう一つは少年のものだ。
二人は気配を消し、完全に茂みの影と同化している。例え近くを人が通りかかっても、簡単には気づかれないだろう。
「五暁(ごぎょう)せんぱーい、今は一応任務中なんすから、私語は必要最低限に慎みましょうよ」
「おーいおい、そういうなよ風軌(ふうき)後輩。これがオレの必要最低限だ。それに任務たってくそつまらない偵察任務じゃねぇか。話してなきゃ暇死にするっての」
少年――風軌の注意に対し、青年――五暁が軽口で返す。
風軌にとって、五暁は先輩格に当たる忍だ。といっても、齢わずか十二の風軌にとっては、里の忍のほとんどが先輩格だが。
この風軌という少年。顔つきや体格は年相応の幼さを残しているのに、その落ち着きようは大人のそれのようだ。
忍らしき忍。しかし、少年らしからぬ少年であった。
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