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「ママ、ここ?」
「そうよ。ここに葵がいるわ」
客室の一室の前に私達は来ていた。扉の横には、控え室、という張り紙が。
「葵、入るわよ」
扉をノックして、ママは中に入って行く。私達も続いた。
「り、涼!?」
ノックから開けるまでに間がなかったので、純白のウェディングドレス姿の葵さんは慌てた様子で手に持っていた物を伏せる。
「何を隠してるのかしら?」
「あっ!?」
ママが魔法を使って今伏せられた板型のものを引き寄せる。
「……やれやれ、直ぐに会えるのに」
「う、うぅ~」
顔を真っ赤にして俯く葵さん。その理由は、ママが持つそれにあった。
「…写真…立て…?」
「あ、ライ叔父さんだ!」
「ブルーになっているかと思ったら、心配いらなかったみたいね」
写真を葵さんに返しながら、ママはニヨニヨした視線を向ける。
「ライに…言う?」
「言わないわよ。でも、良かったわ。その子は幸せになれる。きっとね」
「……うん」
まだほんのり顔が赤いままだけど、葵さんは顔に当てていた手をお腹へと持っていく。
そこには、私達の従兄弟となる赤ちゃんが宿っているのだ。
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