Scene.01 マイグレックヒェン

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――吸血鬼(Vampire)――  アイルランドで生まれたブラム・ストーカー(1847~1912)の作品『吸血鬼ドラキュラ』が代表格とされている。  16世紀の現在でいうルーマニアに実在した領主『ヴラド三世』をモチーフとして想像されたらしい。  ヴラド三世の父親がドラクル(ルーマニア語で竜)と呼ばれていたことに由来してドラキュラ(竜の子)と付けられた。  それ以外にも吸血鬼伝説は世界各地に存在している。  日光に弱かったり、十字架やニンニクを嫌ったりと様々な事が言われているが、全ての伝承に合致するものではない。  人間の血液を吸う『生ける屍』とも言われる。  ノスフェラトゥという醜悪な種族もいるが、大概は息を呑むほどの美形ともされている。鏡に映らない、人間には見えないと伝えるものもある。 「どっちなのよ!」  透けるような白い肌、金の髪に漆黒の瞳を持つ少女はいきなり立ち上がった。  手に持っていた本を水路の中に投げ込む。高級な皮の表紙の本は濁った水の中へと吸い込まれていく。すぐに姿は見えなくなる。 「お客様、水路に物を投げ入れられては困ります!」  情けない声で船を漕ぐ男性は言った。
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