都は日本に一つでいい

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都は日本に一つでいい

 21世紀初頭、遅々として進まなかった地方分権が、大阪都構想の発表により前進を見せ始めた。政府は「人口200万人以上を擁する政令指定都市とその周辺地域」に限って、東京都特別区、いわゆる23区と同じ行政区の設置を認める法律を制定した。  東京都知事は「日本で『都』を名乗れるのは国の首都である東京だけ」と猛反対した。大阪府知事と大阪市長は一旦は「大阪都」の名称にはこだわらないと軌道修正したが、自分の住んでいる場所が「都」になると住民は「都民」と名乗れる。  ここで日本人特有の見栄っ張り気質に火が付き、全国各地でやや暴走気味の住民運動が次々に発生した。折しも総選挙が近いと噂されていたため、国会議員の多くが自分の選挙区で「地元を『都』に昇格させます」と無責任な安請け合いをしたため、政府、国会も引っ込みがつかなくなり法律に「特段の事情がある場合はこの限りではない」という余計な但し書きを付けてしまい、人口200万に到底及ばない自治体でも「都」に改名する事が可能になった。
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