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父が出迎えてくれた。
「おかえり。また事件に巻き込まれたそうだな。でも無事で何よりだ」
「俺のキッタ、ハッタの大活躍で、無事解決したよ」
大活躍と言う割には、イズミは浮かない顔をしている。
「ヒロさんと何かあったのか?」
「別に」
二日間も一緒にいて、絆が深まるどころか、溝が出来たなんて、恥ずかしくて言えない。
「留守の間に湯浅月子さんという人から連絡があったぞ。お前の卒業後の進路の事など訊かれた。嘘は言えないから正直に言ったら、是非娘とデートしてくれと頼まれた」
湯浅月子はイズミに遺産をくれた及川佳純さんの親戚だ。イズミは以前月子に受験が終わったら、娘の歌穂とのデートを考えると言ったままだった。(遺産相続殺人事件の章 参照)
「父さん、あの親子からは結婚を迫られている。だから連絡があったらその話は断わって」
イズミが階段を上がると、タイセイが部屋から顔を出した。
「元気ないけれど、ヒロさんと喧嘩した?もう別れた?」
「まだ別れていない」
余計な事を訊いてくるタイセイにムッとして言い捨てると、自分の部屋に入った。
すぐにゴロリとベッドに寝転がった。
『疲れたな』
怒涛の三日間だった。
目を閉じるとヒロの体や白い首、色々な表情が脳裏に浮かび上がった。
とても切なかった。
終わり。
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