21/43
1877人が本棚に入れています
本棚に追加
/398ページ
ロビーで待ってくれていた 陸と山崎。 「おまえ、貧血?」 「顔色悪かったですもんね、車酔いも酷かったし…」 山崎がそう言うと 陸が "………あ" みたいな顔で私を見た。 「……おまえ」 私は 椅子に腰掛け 精算に呼ばれるのを待つ。 「妊娠してるみたい」 陸と山崎が顔を見合わせる。 「誰の子?」 陸が私の前に立ち、私の肩を掴む。 「ATSUSHIじゃないんだろ?」 私が 返事をしようとしたら、 他の患者が私達に気付く。 「あれ、ほら、巡り愛の 主演の子し゛ゃない?」 「……………」 私達は目立たない端の席に移動 山崎が 複雑な顔をしている。 「ハル社長に、早く 伝えてあげましょう」 私は 首を横に振り、 「星野さーん」 と 呼ぶ窓口に 向かって歩いた。 ハルは 受け止めてくれるだろうか? 女優としても未熟で たった一度、 抱かれただけで 妊娠してしまった、 二十歳になる私の 迷いのない決断を― ハルの 薬物取締役違法の 罪をとう、 その裁判の 第一審 映画撮影も重なり 私は 行かなかった―――
/398ページ

最初のコメントを投稿しよう!