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〈皐月、来週そっちに行くよ。〉
ただそれだけをメールした。
時差があるから返事は期待していない。
美馬さんに会えるかどうかも、期待しないことにした。
仕事で行くんだから、彼を探す時間なんてない。山城くんが一緒にいるし、帰りの飛行機だって予約済みだ。
それに、会えたら……帰りたくなくなるんじゃないかと思う。
この3年、私なりに頑張ってきた仕事の実績を全くの無にするほど、彼への気持ちは絶大な影響を持っていると思う。
それを封じ込めることが出来ているのは、変えることのできない距離と時差と、連絡手段が皆無だという現実だ。
唯一残された繋がりは、彼の勤める社名だけ。
来週が待ち遠しい。
彼に会えるかもしれない。
そんな期待をしても意味がないと分かっていても、心は勝手に暴走して、帰国の飛行機の中で絶望する私のことなんかお構いなしだ。
だけど、もし会えたら。
その時は、何を話そう。
なんて呼んだらいいのかな。
彼は、どんな顔をするのだろう。
3年はあっという間だったけど、確実にその分だけ時間が流れている。
皐月の言う通り、既に新しい相手がいてもおかしくない。
それでも、やっぱりもう1度この目で、彼のことを見つめたいんだ。
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