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なのに鈴木主任は嬉しそうにニコニコとあたしに右手を出してきて。
あたしもついつい、意味もわからないのに、いつもの調子でその手を握る。
「はい、下川詩子さん合格!」
「はぁっ?」
握られた手は上下に大きく揺さぶられて。
「いやいや……、何がですか?」
「私の代理」
「だーかーらー!
主任には悪いですけど、できませんって!」
「できる!」
妊婦とは思えないほど強い力。
あんまり力むと赤ん坊が出てくるって。
あたしが必死でその手をほどこうとしているとき。
「医療相談室ってここ?」
背中越しに聞こえた声。
小笠原崇──だった。
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