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でよぉー、と続けようとしたがその言葉は喉の奥で消えていった。
覗き込んだ鈴原の瞳は、瓶底眼鏡に隠れていたがパッチリ二重で大きかった。
なにより、金がかっている不思議な瞳に、真っ直ぐな瞳に、俺は捕らえられた気がした。
もう遠い昔のことなのに、あの子の声が頭の中に鮮明に響く。
『りん、りん』
あぁ。
『りん、君の瞳は深い黒色でまるで黒曜石のようだね。でも闇のようではない温かい色だ』
あぁ。
『あの子の瞳はまるで月みたいなんだよ、黒に金が夜みたいでとてもキレイなんだ』
あぁ。
あぁ。
本当だね。
月みたいだ。
「――、―ぃ、…おいっ」
はっ、といつの間にか俯いていた顔を少しあげると、怪訝な顔をした鈴原が声をかけてきていた。
さっきは金に見えた瞳も、今はそんなことはなくただの黒色だ。
何故金なんかに見えたかは分からないが俺は動揺しているようだ。
少し震える手を、そっと鈴原の肩から離す。
と同時に鈴原はぐいっと引っ張られ樋本の後ろに隠された。
殺気立つ樋本にへらりと笑う。
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