1.竜胆と木藤

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でよぉー、と続けようとしたがその言葉は喉の奥で消えていった。 覗き込んだ鈴原の瞳は、瓶底眼鏡に隠れていたがパッチリ二重で大きかった。 なにより、金がかっている不思議な瞳に、真っ直ぐな瞳に、俺は捕らえられた気がした。 もう遠い昔のことなのに、あの子の声が頭の中に鮮明に響く。 『りん、りん』 あぁ。 『りん、君の瞳は深い黒色でまるで黒曜石のようだね。でも闇のようではない温かい色だ』 あぁ。 『あの子の瞳はまるで月みたいなんだよ、黒に金が夜みたいでとてもキレイなんだ』 あぁ。 あぁ。 本当だね。 月みたいだ。 「――、―ぃ、…おいっ」 はっ、といつの間にか俯いていた顔を少しあげると、怪訝な顔をした鈴原が声をかけてきていた。 さっきは金に見えた瞳も、今はそんなことはなくただの黒色だ。 何故金なんかに見えたかは分からないが俺は動揺しているようだ。 少し震える手を、そっと鈴原の肩から離す。 と同時に鈴原はぐいっと引っ張られ樋本の後ろに隠された。 殺気立つ樋本にへらりと笑う。
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