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総じて重力とか無視した動きだった。
そもそも、常識を逸脱している。
これが正真正銘チートなのだろうか……。
「――これぞエアリアルフニィッシュ!!!!!」
血に塗れた大剣を担いだ、少女は見とれるほど可愛い笑顔でそんなことを言う。
「空中で仕留める必要があんの!?ってか、最初の一撃でもうHPは0よ!!」
「何をおっしゃる、彰人さん。アクロバティックな戦闘をすることにより、リザルトで経験値や取得アイテム上昇の補正がかかるのですよ!オーバーキルなら、尚の事!!」
「ゲームの話!それゲームの話だから!!」
「大事なことなので2回言いました?」
――もう、いや……この吸血姫。
その吸血姫が指をパチンと鳴らすと、空の色が茜色になり、風の音が聞こえてきた。
生活感というものが、戻ってきた気がする。
結界がなくなったようだった。
「それじゃ、彰人さん」
シルヴィが髪をかき上げると、手の流れに沿う様に、青白い銀から栗色に変わっていく。
「帰りましょう?」
――本当。
ときどき、思わず見とれてしまうのに本当に、残念だ。
この笑顔のまま過ごしてくれれば良いのに。
「――うん」
彰人はため息をついて、彼女と家路についた。
あれだけ騒いだというのに、世間はそれに気付いていない。
魔族も霧の様に消え、それが居た証拠もない。
――この先、いつまでこの生活が続くのかと思うと、憂鬱でならない彰人だった。
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