二章『レベル250の戦いは、もはやワンサイドゲームである』

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総じて重力とか無視した動きだった。 そもそも、常識を逸脱している。 これが正真正銘チートなのだろうか……。 「――これぞエアリアルフニィッシュ!!!!!」 血に塗れた大剣を担いだ、少女は見とれるほど可愛い笑顔でそんなことを言う。 「空中で仕留める必要があんの!?ってか、最初の一撃でもうHPは0よ!!」 「何をおっしゃる、彰人さん。アクロバティックな戦闘をすることにより、リザルトで経験値や取得アイテム上昇の補正がかかるのですよ!オーバーキルなら、尚の事!!」 「ゲームの話!それゲームの話だから!!」 「大事なことなので2回言いました?」 ――もう、いや……この吸血姫。 その吸血姫が指をパチンと鳴らすと、空の色が茜色になり、風の音が聞こえてきた。 生活感というものが、戻ってきた気がする。 結界がなくなったようだった。 「それじゃ、彰人さん」 シルヴィが髪をかき上げると、手の流れに沿う様に、青白い銀から栗色に変わっていく。 「帰りましょう?」 ――本当。 ときどき、思わず見とれてしまうのに本当に、残念だ。 この笑顔のまま過ごしてくれれば良いのに。 「――うん」 彰人はため息をついて、彼女と家路についた。 あれだけ騒いだというのに、世間はそれに気付いていない。 魔族も霧の様に消え、それが居た証拠もない。 ――この先、いつまでこの生活が続くのかと思うと、憂鬱でならない彰人だった。
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