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太陽が沈んでいく。
夕方であると天が教えてくれていた。
「させ……ない!!」
その時刻の公園に小学生の少年がうつ伏せに倒れていた。
目の前には身長が160センチ程のダークスーツを着こなした男が立っていた。
少年からすればその程度の身長でも男は強大な存在に見えてならない。
「まだ立ち上がるのか?」
「あたり……ま、えだ!!」
少年は声を荒げながら四肢を奮い立たせる。
身体は目の前の男に痛め付けられていて、満身創痍であるにも関わらずだ。
「もういい!! もういいから!!」
少年は少女を庇うように立っていた。
そして少女は目頭に涙を貯めて、少年に止めるように懇願していた。
「できるかよ!!」
少年はボロボロだ。
服は砂を被ったように汚れ、ズボンもさしずめダメージジーンズがごとく穴が空いていた。
「『嫌だ』って言ったのに、お前が連れて行かれようとしてんだ!! それを放っておけるかよ!!」
何か事情があるのかもしれない。
小学生の自分には思いも知れない事情が。
でも、大人の都合を小学生の少年に「分かれ」と諭すのは難しい。
ただ少年は目の前の親しき少女が望まれない場所へ連れて行かれようとしているーー少年にとってはそれだけで少女を庇うのに十分な理由が並んでいた。
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