プロローグ

2/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
 出会いとは不思議なものだ。  本人が自ら望んで出会いを作ることは出来る。所謂ナンパと呼ばれる行為もこれにあたる。  かと言ってそれがすべての人間が出来るわけではない。  生まれつき臆病、いやそこそこ人見知りをする方である僕にとって、ナンパなんて行為はとてもではないが出来そうもない。  そう、だからあの時は、あの出会いは必然なんだと思う。  でも、例え必然であったとしても、せめて前触れというものをもうちょっと教えて欲しい。  少しは前触れという物があれば僕だって慌てることなく、もうちょっと上手く対処できるだろうに、それをわざとさせないようにしているとしか思えないような出会い方だった。  しかし、どんなに言い繕おうとも現実は違い、実際僕と彼女の間にはしっかり前触れの前の段階があった。が、そこで僕が気付かず、そして実際にあった時に上手い返しや行動が出来ていなかっただけである。  因みにここで一つ告白したいことがある。  浪漫がないだのなんだのと言われるかもしれないが、僕は神という存在を認めたりはしない。  彼女と出会えたのは神が定めた道などではなく、会うべくしてあった、言わば必然だと思っているからだ。  一部事情を知ってる者からは「それが運命ってものだろ?」と言われたりもするけれど、そんなちゃちな言葉では言い表してほしくない。  運命とは逃げの言葉だ。  その一言で大体のことが飲み込めてしまい、真実から目を背けているだけで、前を見ようとしていないだけ。とは言うものの、これは彼女の受け売りであって僕自身の考えではない。  僕にとって運命という言葉を、道の無い所に橋を架ける行為だと思っている。  それが例え良いことでも悪いことでも、本来なら行き止まりであるその先を作る言葉。  そしてその橋は他にある道に比べ渡りやすいことから、だから彼女はそのように形容したんだろうと推察する。 「何か路線がズレちゃったな」  身体を起こし、机の上に広げられた日記帳を見ながら思わず口にする。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!