悪因悪果

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それを知っていて尚、こうして堂々としているということは馬鹿なりに何か考えて…。 「何かあったらか……うむ、そん時はそん時に考える!」 そうか分かった、何も考えてなかったんだな馬鹿め。 能天気にヘラヘラ笑う馬鹿の足を机の下で踏みつけ、痛みで悶える馬鹿と、馬鹿の隣でアタフタとするワンころを見つつ、少しズレた眼鏡をため息と共にかけ直した。 薄々分かってはいたが、改めて実感した。コイツは本気で何も考えず、ただ自分の思うままに動く単細胞男なのだ。その後の事など全く考えない厄介なヤツ。 その癖、もっとタチが悪いのは。 「ってぇ……悪かったって。心配すんなよ、なるようになるって。多分!」 「ほぅ…ついでにと言わんばかりに巻き込まれる僕の迷惑を考えた事があるのか、お前は」 「ねぇな。だってそんなん、お前巻き込む前に潰してるだろ俺」 「……。今既にこの状況が、巻き込まれてるって事に気付け」 「実害が無ければよし!」 「……はぁ」 悪びれなく無邪気な笑顔を向ける馬鹿に、ひたすら零れるため息が止まらない。 そう、この男の最もタチが悪いところはココだ。思うがままに動く、しかし周囲に迷惑は一切かけず事を為す。終わらすのだ。全てを。 僕に悟らせる事なく気付いたら事は終わっていて、そして当たり前のように隣に居るのだ。 時には傷だらけで、そして時には……血だらけで。
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