序章

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ようやく戦乱の世から脱した日の本。 神君徳川家康が興した江戸幕府は、三代将軍徳川家光の治世にはその基盤を盤石なものにしていた。 家光が将軍になった時に言われたとされる「余は生まれながらの将軍である」という言葉にもそれは表れているだろう。 だが、世の中には徳川に恨みをもつもの、家光に成り代わろうとするものなど、多数の危うさを含んでいた。 知恵伊豆こと松平伊豆守信綱は、この危うさを危惧していた。 家光と信綱はこの状況に対して、ある特殊な任務を帯びた役職を用意する。 その役職はけして表舞台にはたたず、影として暗躍する。 各藩、諸大名が後に恐れる事になる幕府の影-『隠密』である。 そしてその隠密には特殊な(異能)を持つ者が選ばれた。 《異能》ー、それは古来から使える者は神や仏、或いは魔の力として恐れられた異質な能力。 ある者は雷雲を呼び、ある者は手の一振りで烈火を起こす。
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