僕は溺れ死にました

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ああ…僕の大好きな洋子。 君が生き残ってくれれば僕は嬉しい。 僕が洋子と出会ったのは中学校2年生の頃。 同じクラスになって…。 隣の席になって…。 修学旅行で同じ班になって……。 それからずっと…ずっと好きだった。 あの時君には彼氏がいたね。 僕は辛かった…。 でも彼氏と喧嘩した時、いつも君は隣で泣いてたよね。 あの時だけは僕だけの洋子になったみたいで…嬉しかった。 おかしいよね(笑) 今の洋子は僕だけを見てくれてるのに。 高校生になって、君と僕は同じ高校に通った。 二人とも美術部だったよね。 本当は…あの時も君と一緒に居たくて同じ部活に入ったんだ。 おかしいよね(笑) 今の洋子は僕だけを見てくれてるのに。 大学も同じ学部に通ってたよね。 この時ばかりは運命を信じちゃったよ。 同じゼミだったから…帰りが夜遅くなる日は、君を家まで送ってあげたよね。 本当は僕の家、逆方向だったんだけど…とっても君が心配だから着いて行ってたんだ。 おかしいよね(笑) 今の洋子は僕だけを見てくれてるのに…… そして社会人になった。 とうとう君と僕は離れ離れになっちゃった。 君は大手化粧品メーカーのキャリアウーマン。 僕は冴えないフリーター。 君が社会人になって一人暮らしを始めたから、僕も実家を出てきたんだ。 フリーターだからあまり稼ぎのない僕にも…君は優しかった。 だって僕を一緒に住まわせてくれてたんだから。 僕もなるべく君の負担にならないように夜勤のバイトを選んで、君が仕事をしてる時間に帰ってたんだよ。 おかしいよね(笑) 今の洋子は僕だけを見てくれてるのに そして今日はフランスまでの新婚旅行。 楽しい船旅になるはずだった。 でも乗ってた船が浸水して…僕達は海に投げ出された。 みんなが船員の誘導でボートに乗り込んで行く。 でもいくら探しても君の姿がない。 君を待つ事なく、無情にも出発するボート… 僕は頭が真っ白になった。 ああ…愛しの洋子。 君がいなくなったら僕が生きている意味なんかないんだよ……。 その時…君が僕達の乗るボートにしがみついてきた。 奇跡だと思った! でも僕達のボートはもう満員。 これ以上乗ったら沈んでしまう。 ……僕は迷わず海に飛び込んだ。 愛する君の為なら命だって惜しくない。 真冬の海も、迫り来る死も怖くないよ。
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