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―コンコン―
「失礼します」
広い会議室の中にはコの字に長テーブルが組まれていて女は窓際に立っていた。
「そこに座って」
女の言葉に山田はドアに一番近い椅子に座った。
「短刀直入に言うわ。あなた、前にサイバーテロでメールが使えなくなった時…手紙書いたわよね?取引先に」
女の言葉に山田が「手紙?」と聞き返した。
「えぇ、手紙よ。取引先に書いたでしょ!この手紙!」
バン!と机の上に叩きつけられたのは一枚の謝罪文章だった。
『謹んで申し上げます。この度は弊社の都合により…』
「これが…なにか?」
山田がわからず頭を垂れる。
「なにか?じゃないわ!」
女は一呼吸おき感情を抑えるように山田に話す。
「あなたが書いたこの手紙…たまたま私が抱えてた取引先にも届いてて『おたくの会社にはこんな風に謝罪の手紙を書ける方がいらっしゃるんですね、是非とも取引を』って言ってきたのよ…わかる!?あなたの書いた手紙で商談が成立したの!」
山田は何がなんだかの様子でただ「はぁ」と繰り返すだけだった。
「何度足を運んでもダメだった…。うちだけじゃない、他社にもなびかなかったあそこの社長を手紙一つで首を縦に振らせたのよ、たった…たったこんな紙切れ一枚で…なんなのよ」
女の言葉には悔しさと苛立ちがにじみ出てる。
山田はゆっくり口をひらいた。
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