episode2

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きっかけは小さなことだった。学校に着くと、講義の準備をしていた僕を講師が呼び出したのだ。 僕宛ての手紙が学校に届いたという。 差出人の名を見てみると、驚きもしたが何となくそうだろうな、とも思った。 高田雅史、僕の実の兄その人だった。 まぁ、僕に手紙を、しかも学校に行くことを見越して送ってくるなんて、肉親ぐらいしかいない。 兄も手紙の数は少ない(メールでのやり取りは時々する)が、父に至ってはほとんど手紙もメールも電話もない。 帰る際に連絡をくれるぐらいだ。 しかし、こちらは当然の疑問だが、なぜわざわざ学校にまで送ってきたのか。 家に送ればいいのに、公共機関を介して僕に何か伝えたいことでもあったのだろうか? そんな海外の三流アクションドラマの導入部分を想像して苦笑いする。 それが本来だとすれば、きっと僕はこれから拳銃片手にUSAを走り回るような人生に放り込まれることだろう。それは断じて勘弁。 僕は家族構成こそ多少特殊だが、その他はそれなりに普通の人生を送っているつもりだ。 講師に礼を述べてから僕は手紙を受け取った。 一限の教場で端の席を確保し、早速手紙を開いてみる。 ーーまず目についたのは、字体だった。 明らかにその手は震えており、何かに怯えながら筆をとっているのでは、と想像ができる。 次に書き出し。手紙はこう始まっていた。 「お前に謝らなくてはならないみたいだ」 謝る? 兄は何かをしでかしたのか、それが僕に影響するから謝ったと。 兄は様々な国の宗教に関して個人的な調査を続けており、独自の発想を盛り込んだ論文も書いている。 メディアに取り上げられるような功績はないが、文章のレベルの高さは弟の僕が一番認めていた。 世間が認めないのは、取り上げた話題が最近のニーズに合わないからだと今でも信じて疑わない。 それが更に次の奇妙な点でもあり、文章がめちゃくちゃなのだ。 時たま家に送ってくる手紙だってしっかり筆をとる感覚を忘れちゃいない、それが僕の兄なのだ。 それらの違和感を覚えながら手紙を読み進める。 内容についてまてめると、以下の通りだった。
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