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『ゆっくん……あたしの一番の宝物。…大事にしてね。』
幼い頃、遠くに引っ越す幼なじみの君が僕にくれたのは、薄ピンクのドレスを着た大きな瞳のリカちゃん人形だった。
あれから20年。裕二、28歳の秋。
「なぁ。ナンパしね?」
高校からの友人である夕貴はマックのポテトを数本頬張り、コーラを飲みながら器用に話す。
「面倒臭いから嫌だ」
俺は携帯片手に、ダブルマックバーガーにかじりついた。
「じゃあさ、今夜キャバクラデビューしね?」
「つば飛んでる」
微妙に興奮気味の夕貴を一瞥して、軽くあしらった。
「なぁー。少しは遊ぼうぜ」
つまらなそうにボヤいて、カスのようなポテトをケースごと口元に運んで流し込んだ。
思いの外、口いっぱいになったそれを懸命に咀嚼しながらも、視線は俺から離れない。
そして頬の膨らみも幾分収まったとき、夕貴は躊躇いながらも口を開いた。
「なぁ。もしかしてお前、ホモなっ!」
まだ口の中にポテトが入っていたが、そんなことはお構いなしに夕貴の頬を思いっきりつねった。
「いたたたっ!…いったい!」
痛いと言う度に口からポテトが零れる。
俺の手を振り払った夕貴は頬を撫で睨みつけた。
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