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少しぶりに見たネオンに目が眩む中、それすら避けるようにフードをつまんで深く被り、闇に紛れるように細い道へ進む。
やはり大通りとは違い街灯の光すら届かないようなその道が良い。慣れ親しんだ程よい暗さに、少しだけ背筋が伸びる。
その先に蛍光灯の明かりが薄ぼんやりと見えてきたと思えば、少し広い空き地に出た。
「……ユキ」
「ふふ、久し振りね、タマ」
「そんな、でもない……あと……タマ、や」
「冷たいわね。取り敢えず予定通りね」
「はあ……りょ」
どうやら呼び方を改める気がないらしい彼女に何度目かの溜め息を吐いて歩みを進めた。
「ショー……は」
「その内来るわ」
軽い言い様。
言葉を聞きながらマスクを着ける。
そして目的地に着いた。
まあ、すぐそこだったわけだ。
――目の前。
一列に並んだ前四人と、その後ろに二十人程度。
それと向かい合う様にこちらも二十人ほどの人。
「あっ、ユキさーん!」
「みんな揃ってるかしら? まあ、揃ってないでしょうけど」
「そりゃそうっしょ!」
《crazy cats》は人が多い。
だからこういう《お遊び》のときには相手に大体人数を合わせることにしている。
「くりー。くり、逃げてないわよねー?」
そのお相手様がいても余裕綽々ともとれる、いつも通りのマイペースを発揮する総長、ユキ。
「はいユキさん……というか、マロンですって……」
慣れたみたいに苦笑したマロン。これでも幹部。
「私の椅子は?」
「奥にちゃんと置いてあります……」
「ショーは?」
「ちゃんと守ってます」
「よろしい」
楽しげに笑うユキを、俺は無表情で、感情をできるだけ薄くして見つめる。
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