混乱

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「操舵不能!このままでは、竜巻に呑まれます!」 「逃げようがありませんっ!」 「船長…っ。」 これ以上の策は無いとわかっていながら、それでも若い船員達は、船長に縋るような視線を送った。 「く…っ。」 だが、船長にも答える術は無かった。 目の前には巨大な竜巻。 つい数時間前までは、晴天の凪いだ海にいたはずだった。 それが突如、暗く重い雲が雷鳴を轟かせ、荒れ狂う波に踊らされた船は行き先を見失った。 近頃、似たような海難事故が後を絶たない。 何の前触れも無しに起こる嵐に呑みこまれて消えて行った船と乗員達。 名の知れたベテランの航海士でさえ予測できずに、沈んでいった。 「何が起きてるんだ…。」 船長は、ギリ…と歯ぎしりをしながら、自分達に降りかかった災難を呪った。 万全を期して臨んだはずだ。 天候も再三確認した。 船の整備も、この目で確かめた。 乗組員も、長く自分の下で働いてくれていた、信頼のおける者達ばかりだ。 数名の乗組員が、突然原因不明の高熱に倒れた。 伝染病ではないかと、船員達の間に不安が走る。 そんな中で、突如起こった計器の故障。 そして、突然の嵐だ。 何故・・・? 「なんだ、あれ…っ。」 誰かが言った。 その声に、皆が前方を見やる。 竜巻の中、蠢く巨大な生き物。 「…クラーケン…。」 船長は、呆然と呟く。 そして、数々の船を沈めていたその犯人を知った、その瞬間。 巨大な怪物の足に捉えられた船は、乗員もろとも海底へと引きずり込まれていった・・・。
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