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真昼の月
淡い眠りから覚めて
目を開けると
眼前に真っ白に輝く
砂が見えた
見渡す限りの砂の平原は
真昼のように
輝いているのに
空は真っ黒で
見た事もないような
満天の星空が見える
草木は1本もなく
風はそよとも吹かない
「月の明かりは死んだ光。
どこまで進もうと
何1つ変わる事はない。
死とは不変。
変わらないモノを
変えようとするのは、
愚か者か天才の
する事だと思わないかね」
何故、いきなり自分が
こんな不可思議で
気味の悪い世界に居るのか
見知った場所を探そうと
ただひたすら前に
歩いて行こうとしたら
後ろから男の声がした
慌てて振り向くと
屋外に置くには不似合いな
1人掛けの丸テーブルに
男が座って
私を見て笑っている
「あなたは誰?」
愚問だ。男が誰だろうと
この場所の説明にはならない
「もうすぐ我々の月が昇る」
男はテーブルに置いてある
ワインを優雅に飲む
男の背後から
私の知っている月とは違う
大きく青い天体が
登り始めた
それは写真なんかで
見た事がある
あれが地球なのだとしたら
ここは月でしかあり得ない
「これは夢だわ」
茫然と呟く私に男は囁く
「現と夢はどちらも同じ。
君がこれを
夢だと思うなら
君が眠りについた時に
見る夢を現としようか」
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