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ファーの超科学の産物の一つ、人工衛星。
その赤い光の点滅は、外界と分け隔てなく、新天地アゾレス大陸の空をも横切っていく。
世界各地の情勢を見下ろしながら、膨大な映像を記録してファーのシステムに送信を続けている。
通常、これらの未編集映像をファーの一般住民が目にすることはない。
AE研究グループ…通称ラボのごく一部の者、また為政者の限られた者にしか視聴権限が与えられていないからだ。
ラボの研究員時代、シオは改造した携帯端末から不正アクセスをして、これらの映像記録をよく引っこ抜いたものだった。
音声こそないが、外の世界から切り離されたファーにおいては外部を知る貴重な情報源だ。
それが、久々に不正アクセスしようとすると完全に拒絶された。
「くそっ。システムのセキュリティが強化されている」
病院のベッドから動けずに頭を抱えたシオは、正攻法で突き進むことにした。
ミルに相談してラボの博士と通信し、事情を説明の上、駄目もとで映像記録閲覧の許可を請うたのである。
意外にもシオの要求はあっさり通った。
帝国内部の映像記録に限り、条件つきで閲覧の特別許可が出た。
それからというもの、シオは検査の合間を縫っては病室のモニタに向き合った。
映像記録をモニタに映し、一触即発になっている聖狼連合軍とママタ帝国軍の動向を日々見守る。
必要ならヤンとの通信も欠かさなかった。
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